IBD, inflammatory bowel diseases

炎症性腸疾患

 

炎症を伴う腸の疾患

特異的なものと、非特異的なものに大別される。

基本的に原因不明で、若年発症、生涯に渡る継続治療が特徴。

 

非特異的なものに、潰瘍性大腸炎クローン病がある。

 

潰瘍性大腸炎

びまん性の大腸に限局した病変、大腸の表層粘膜に限局し、肛門から口側に連続性に病変が見られる。

 

クローン病

口腔から肛門までの全消化管に全層性炎症で、非連続性のビラン・潰瘍を伴う、慢性肉芽種性炎症を来す。

縦走潰瘍。腸間膜付着側にできる。(血管支配が豊富)

それにより、癒着や、瘻孔が形成される

 

IBDの罹患年齢、人数

クローン病が10〜20、潰瘍性大腸炎は20代がピークだが、裾が重い。

IBDは400人に1人となる。

 

IBDはどうして起きるのか、

遺伝的素因、環境因子、腸管内抗原、免疫応答が発症に関与している。

 

IBDの病態生理

  1. 腸管の上皮細胞のバリア機能が破綻する。
  2. 抗原提示細胞が腸管関連リンパ組織に移動して、ナイーブリンパ球を活性化させる。
  3. 活性化して、integrinが発現したリンパ球が増加する。
  4. 血管からホーミングして、
  5. 炎症性サイトカインを放出する。炎症反応を誘発。
  6. 上皮細胞の傷害が起きる。

 

IBDでは腸以外の病変が出現する。

アフタ性口内炎骨粗鬆症な、多関節炎、腎結石、眼病変など

 

IBDの治療方針としては、2種類ある。

寛解導入療法

過剰な炎症を早く落ち着かせる。

寛解維持療法

落ち着いた状態を長引かせる。

 

段階的に治療する。(step up)

 

具体的な内科的治療について

潰瘍性大腸炎

クローン病

 

治療薬の各論

5-ASA製剤(腸管の塗り薬)

IBDの第一選択薬

 

安全性が高い。

不耐(アレルギーみたいな)が患者の10%程度

 

腸管表面や、粘膜層まで入る。炎症反応の抑制(上皮細胞の維持、リンパ球の活動抑制)

 

5-ASAにも色々ある。

サラゾスルファピリジン、ペンタサ、アサコール、リアルダ

腸内細菌による化学結合の開裂、pHによるカプセルの溶解、放出

 

ステロイド、グルココルチコイド(血管を介して免疫抑制)

抗炎症、免疫抑制、寛解維持には使用しない。

受容体から取り込まれて、複合体として核内に移行して免疫抑制。

 

ステロイドにも色々ある。

ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンデキサメタゾン、ベタメタゾン

半減期や鉱質作用、副作用などに多様性がある。

 

 

ステロイドに対する問題として、ステロイド抵抗性と、ステロイド依存性の症例がある。前者には、寛解導入薬、後者には、寛解維持薬を加えることで、乗り越える。

 

5-ASAとステロイド以外にも、色々ある。

血球成分(白血球)除去療法(炎症を起こす細胞の数を減らせば、炎症止まるんじゃないか?療法)

カラムビーズみたいなのに、血液を通して要らない白血球を吸着させて取り除く。

 

免疫調節薬(チオプリン製剤)

核酸合成阻害作用によって、白血球機能を抑える。

NUDT15遺伝子多型。アジア人の免疫調節剤の副作用が、ゲノムの情報からある程度予測できる。

 

カルシニューリン阻害薬(タクロリムス)

生物学的製剤・JAK阻害薬

胎盤を通過してしまう。新生児に対する影響を考えるべき。

 

IBDと手術。

治療薬剤で、病状をコントロール

UCは基本大きめにとる。(大腸を取ればOK)

CDは基本小さめにとる。(全消化管において、発生するので、とっても再発)

 

治療目標

内視鏡寛解、将来の疾病(癌など)のリスクを減らす。

カプセル内視鏡などがある。

 

結局何が難しい?

・患者背景(年齢、性別、遺伝子多型など)

・病変の多様性(病変部位、併存症など)

・治療の多様性(不確実性、ベネフィット、リスクなど)

・社会的なこと(経済、仕事、生活スタイル、家族、隣人)

 

何が嬉しくない?―どうなる。腸管に炎症が起きて、ボコボコしたり、穴が開いたり。栄養吸傷害が起きたりする。

直腸診じゃないけど、直接塗った方が良くないか?―コストがかかる。毎回経肛門アプローチをしないで済むならそっちの方が、簡便。

癌・感染症の患者では、どうする?免疫抑制が癌の進行を進める場合は?―特異的な治療を使うことで、回避しようという話。

病勢の振動?―なに?