Mann-Whitney U testは、2集団からランダムに抽出された値XとYについて、
P(X<Y) = P(X>Y)
が成立するという帰無仮説の、ノンパラメトリック検定(パラメーターで表記された確率分布に基づかない検定)である。
ここで、U統計値について説明する。
U統計値とは、
集団Xから得られたiidのn個の標本、X1からXnと、
集団Yから得られたiidのm個の標本、Y1からYmがある時、
2つの標本は互いに独立なら、
ただし、
XとYについて、このU(ここではUxとおく)を計算して、
今度はXとYを入れ替えてU(ここではUyとおく)を計算する。
UxとUyを比較して、小さい方を検定い用いる。
※実は Ux+Uy=n*m が成立する。
サンプル数が多いと、Uは近似的に正規分布となる。その場合、標準化すると、
ただし、
もし、順位付けをする時に、同時順位のものがある時(X=Yとなるサンプルがあった時)は、σを以下のように修正する必要がある。
ここで、kは全体の順位の数であり、tiは順位iのサンプルの数である。
最後に、このMann-Whitney U testの応用例を見ていこう。
Nature Communicationsに、、耐性獲得が起こりにくいAnti-Microbial Peptide(AMP)、抗菌ペプチド(アミノ酸が鎖を成したもの)を調べた論文が掲載されたのだが、ここに、Mann-Whitney U testが使用されている。
Figure1bにおいて、
Lablatory evolution、つまり研究室で抗菌ペプチドと共に培養することで、耐性獲得が出来るように微生物が進化するのだが、
その耐性獲得の指標として、MIC(Minimal Inhbitory Concentration:最小発育阻止濃度)を用いている。MICが低い程、微生物にとって有害であるわけだ。
TPⅡとPXBという2種類の抗菌ペプチドで、同一種の微生物で、培養前と培養後でのMICの変化を数値(例のXi, Yj)として、Mann-Whitney U testを行っている。
この論文では、
「TPⅡとPXBでは、MICの変化には差異が無い」という帰無仮説を棄却した。
ということだ。
ちなみにこの論文のDiscussionにも記載されているが、TPⅡはかなり有望な抗菌ペプチドであるそうだ。