前回の記事で、事前確率、事後確率、尤度について説明した。
今回は、その続編として、Hardy-Weinbergの法則という、法数学で重要な法則の解説といこう。
Hardy-Weinbergの法則
ウィキさんの説明では、
自由交配であること。個体群内の個体数が十分大きいこと。個体群との間で個体の流出・流入がないこと。突然変異が起こらないこと。遺伝子型や表現型による自然選択がないこと。の5つの条件全てを満たしている必要がある。 1つ目と5つ目は選択について、2つ目と3つ目は数について、4つ目はそのシステム自体について、の縛りである。
これらの縛りを守っていれば、以下の法則が成立する。
「ある生物種の個体群における対立遺伝子の遺伝子頻度は、世代が移り変わっても変化しない」
少し小難しい言葉を用いているので、柔らかく理解する。
例えば、大きい箱に、様々な色のビー玉が沢山入っていたとしよう。これを2つ取り出して、ペアにする、という操作を箱が空っぽになるまでする。
そして、その後、ビー玉の2つ組(ペア)の、片方を取って、別のペアのビー玉と入れ替える、という操作を何度もしたら、どうだろうか。
勿論、ごちゃ混ぜになる。しかし、全体では、ビー玉の組成は何も変わっていない。箱に入っていたものを、取り出して、何回シャッフルしても、箱に入っていたものから変化無し。
遺伝学的な言い換えをすると、
箱(遺伝子プール)を用意して、ビー玉は勝手に増えないし減らない(他の個体群との間の個体の流入・流出がない)し、ビー玉の色は変わらない(突然変異はない)し、ビー玉のシャッフルの仕方はランダムで(自由交配。自然選択がない)行うと、ビー玉の色の組成(遺伝子頻度)は常に一定である。
というイメージだ。
ここで、2点注意すべきことがある。
1つ目は、ビー玉のシャッフルの仕方、この例で関係無いんじゃね、という話だ。これは、誤解を生む表現かもしれないが、「自然選択がない、自由交配」ということの、心は、「性別も、遺伝型も、表現型も、なんも考えんで良いよ」ということだ。だから、ランダムに(なんも考えずに)ビー玉をシャッフル(交配)させる、という表現になったわけだ。
※なんも考えんで良い、というのは、突然変異とか、流出入が無いこと、に関しても当てはまるね
2つ目は、「個体群内の個体数は十分に大きい」という条件が欠落していることだ。これは、今回のビー玉の例は、一個二個と数えられる例だが、実際の遺伝学では、それを確率分布で捉えるため、滑らかな分布にするには、個体数が小さいと、ガタガタした分布になって、正確じゃなくなってしまう。(これを遺伝的浮動という)そういう事情でこの条件は必要なのだ。(ビー玉の例い詰め込めなくて申し訳ない)
短くまとめると、Hardy-Weinbergの法則とは、
「いっぱい人おって、いらんこと考えんでええなら、遺伝子頻度は変わりません」
なんとなくおわかり頂けただろうか。
次回は、Bayesの定理と、その応用をテーマにしていこう。